「らんまん」の町を守り続ける活動
~NPO法人佐川くろがねの会~
この春に放送が始まった連続テレビ小説「らんまん」。その主人公のモデルとなった牧野富太郎博士のふるさとである佐川町で、ガイドなどの活動をされているNPO法人佐川くろがねの会の副理事長宇賀さよ子さんと事務局長の廣田智恵子さんにお話を聞きました。
ふるさとの財産を守っていく活動
佐川くろがねの会は、商家であった竹村家住宅(平成19年に国の重要文化財に指定)についての文化庁の説明を聞き、地元の貴重な財産を活用したいと考えた住民が集まって平成18年に前身となる任意団体が発足し、平成20年にNPO法人化しました。会員数は現在75名で、地元の方や歴史に興味のある方が活動されています。
佐川町は牧野博士以外にも近代土木の先駆者である廣井勇など、大きな功績を残した人物が何人もいるため、佐川町に来た際は色々な場所に立ち寄ってほしいそうです。私は廣井勇という人物を知りませんでしたが、宇賀さんの分かりやすくて楽しい説明を聞いて興味を持ち、ゆかりの人物についてもっと知りたいと感じました。
町全体を盛り上げる活動
メインであるガイド活動のほかに模型製作や草木染めなど、メンバーの得意なことを活かしたおもてなし活動もされています。くろがね家(竹村家の屋号)という名前でお土産も販売しており、草木染めの布小物や、山椒・イタドリの瓶詰めなどを出品しています。
また、現在は観光協会が主催している雛人形の展示や、酒蔵にプロジェクションマッピングをおこなうロード劇場も毎年開催されています。徳島県に藍染の技術を学びに行ったり、英語でのガイドの勉強をしたりと精力的に活動されています。
「らんまん」の影響と今後の活動
連続テレビ小説「らんまん」の影響で、佐川くろがねの会が指定管理を受けている牧野富太郎ふるさと館に訪れる人も、令和4年5月には1530人だったのが、令和5年5月は6973人と、約4.5倍に増加しました。その他にもガイドの依頼が急増するなど、らんまん効果は絶大なようです。宇賀さんは、「らんまんブームに振り回されず、放送が終わった後もたくさんの人に親しまれる町にしたい」と仰っていました。
私は今回初めて佐川町を訪れましたが、高知県に古い町並みが広がる場所があることを初めて知り、とても驚きました。また、牧野富太郎ふるさと館の他にも武士の学校である名教館など、徒歩圏内にたくさんの名所があるのも魅力だと感じました。佐川くろがねの会を取材して、自分の住んでいる町を誇りに思いその気持ちを行動に移されていることに感銘を受けました。次に訪れる際は、観光客としてガイドをしてもらい、楽しみたいです。
(德弘)
問い合わせ先
NPO法人佐川くろがねの会
高岡郡佐川町甲1485
牧野富太郎ふるさと館
TEL:0889-20-9800
選ばれ続ける高知にするために地域を繋ぐ 寄稿:こうち観光ネットワーク 中村 仁洋(よしひろ)
新型コロナウイルス感染症の拡大で沈んだ高知の経済を観光で元気にしようと、高知大学で共に学んだ有志が新しい組織「こうち観光ネットワーク」(以下「KTN」)を立ち上げました。KTNで事務局を担当する中村仁洋さんに寄稿してもらいました。(森岡)
はじまり
高知大学は、雇用創出プログラムのひとつである観光人材育成事業として、観光に必要とされる人材像と教育カリキュラムの検討を行い、平成29年から観光地域づくりを実践的に学ぶプログラム『こうち観光カレッジ』(以下「カレッジ」)を開催しています。
カレッジでは、地域づくり、組織づくりの観点に特化した中核的な観光人材を育成するプログラムで、県内はもとより日本国内の観光に関するエキスパートを講師として迎え、観光マネジメントをはじめにフィールドスタディまで幅広く学べ、「マーケティング力・マネジメント力・実践力」「ファシリテーション力・チーム形成力」「情報収集分析力・企画力」「発信力・プレゼンテーション能力」を高めることができます。
そんな学びを修了した社会人有志が、2023年3月KTNを設立しました。
中心メンバーは岡林雅士氏を筆頭に、観光業やコンサルタント他の業種で構成され、高知県内で観光人材育成、観光講座の企画・運営、研修講師・アドバイザー派遣のほか、観光ツアーやアクティビティの企画や監修、旅行商品の開発、観光ガイド・通訳など多様な取組を計画しています。
多様なニーズ
3年前の新型コロナウイルス感染症の世界的な感染拡大は世界中の観光業に大打撃を与えました。高知県内も例外ではなく、2年以上にわたり観光業は非常に厳しい状態に陥りました。
また、この間に観光に対する世間の考え方も大きく変化し、観光業はコロナ禍以前よりますます旅行者の多様なニーズに応えていくことが求められています。
裾野の広い産業
観光業は業界の裾野が非常に広く、旅行・運輸・宿泊・飲食・農林水産・行政など多岐に渡ります。どの業界も同様ですが、特に観光業は様々な業種が協力・補完しあいながら発展する業界です。
高知をつなげる
旅行者の多様なニーズに応え高知県が旅行者にとって魅力的な目的地となるように、カレッジでの学びや修了生のネットワークを活かしながら、県内や域外の様々な業種の方々を繋ぎ、地域を盛り上げるため、私たちが高知県内の観光業界のパイプ役となれればと考えています。
①観光資源を守る
高知に残された自然や文化・歴史的資源を地元の方と共に守る。
②観光資源を活かす
観光資源を適正かつ的確に活用し、観光地域づくりを進める。
③観光人材を育成する
観光地域づくりを実践できる人材を育成する。
④他業種と連携する
上記の①~③を達成することで持続可能な地域づくりと地域経済の活性化 (観光による地域産業クラスター化) につなげる。
問い合わせ先
《連絡先》 k.tourism.net@gmail.com
紛争の先に自立復興の種を蒔く 認定NPO法人国際地雷処理・地域復興支援の会(IMCCD)代表 高山 良二 氏
季刊誌「えぬぴぃOh!」は、昨年の夏号から冬号と平和シリーズを続けてきた。
前2回では、戦争と平和をテーマとした王希奇(ワンシーチー)「一九四六」高知展や平和資料館・草の家の活動から、太平洋戦争の記憶を後世に残そうとする取組を取り上げてきた。
シリーズの3回目となる今回は、愛媛県北宇和郡三間町(現宇和島市)の出身で、カンボジアで紛争後の自立復興に尽力されている高山良二さんの取組を紹介する。
止まぬ紛争
2022年2月のロシアのウクライナ軍事侵攻から始まった紛争は、多くの犠牲者を出しながら、未だ終焉が見えない。他にもアフガニスタン・シリア・リビア・イエメンなど紛争が続いている地域が世界には数多くあり、新たな紛争危機を抱える地域もまた多く存在する。
紛争は、必ず一般市民を巻き込み落命やソフト・ハード両面での生活環境が悪化し、その地域に住む人々の生活権が奪われる。
負の遺産
例え紛争が終結したとしても、その後にも様々な「負の遺産」が残る。遺恨や格差、差別だけでなく、地雷や不発弾などの爆発性戦争残存物は、地域住民の生活権を脅かし続け戦災復興を妨げる。
戦後70年以上経った日本でも、未だに戦前・戦中の不発弾が見つかり、撤去のために交通規制がかかることもある。見つかった不発弾の処理は、自衛隊があたっているが、令和2年度の防衛白書によると、自衛隊が処理した不発弾は、年間1441件、約33トンになり、特に戦火の激しかった沖縄県で発見される量は突出しており、全国で発見される約3分の1以上を占めている。
カンボジアの状況
爆発性戦争残存物が、数多く残されているアジアの国がある。カンボジアである。
カンボジアは、隣国で起こったベトナム戦争や長期にわたる国内紛争が終わった後でも、膨大な数の爆発性戦争残存物が人々を苦しめ復興を阻んでいる。
カンボジアの地雷・不発弾処理は、独立行政法人国際協力機構等も支援し、同国政府機関のカンボジア地雷処理センターが中心となって実施しているが、同センターによると、地雷・不発弾汚染地域は未だ約2千平方キロメートル以上残っており、現在4百万個とも6百万個ともいわれている未処理の地雷・不発弾除去ペースでは、2025年までに国土を安全化するという同国政府目標の達成は極めて困難な状況となっている。
自立への支援
高山良二さんは、1992年~1993年にかけて、日本初の国連平和維持活動(カンボジアPKO)に自衛官として赴任し、カンボジアへの特別な感覚を持った。
自衛官を定年退官直後の2002年から約9年間、認定NPO法人日本地雷処理を支援する会の現地副代表として、カンボジアで地雷・不発弾処理及び地域復興支援活動に携わっていたが、2010年に退任し、翌年、松山市内でIMCCDを立ち上げた。
IMCCDは、2011年の取組から2023年4月末現在で、対人地雷943個・対戦車地雷217個・不発弾1732発 を処理し、特に地雷汚染が深刻なカンボジア・バッタンバン州カムリエン郡タサエン村を拠点に、地雷除去活動を行っている。
この取組の特徴は「住民参加型地雷除去活動」であることだ。とても危険な地雷除去作業は、訓練を受けたプロが行うのが通常だが、IMCCDは村人を雇用して仕事を生み出し、日本人地雷処理専門家が地雷処理の技術を教え、村人自らが村の地雷を除去することで被災者の減少や、貧困の解消、その他地域の復興に繋げることを目指している。
また、IMCCDは地雷除去にとどまらず、井戸や学校の建設、日本語学校運営、車いすの寄贈、日本企業の誘致支援、地場産業の育成、留学生支援など、自立の種を蒔く活動もしており、地雷が除去された後、誰もが希望をもって生きていける村づくりを目指している。
高山さんは、活動を継続していく中で「地雷・不発弾処理活動が最終目的ではなく、地域が安全になって、そこに暮らす人達が生活できるための地域復興が不可欠で、農業や地場産業の発展を広げる活動の必要性を感じるに至った」と語る。
クラウドファンディングで地域復興
IMCCDは、地雷処理活動の継続支援とカンボジアの地場産業発展につながるカンボジアのジャスミン米とマンゴーを使った2種類の蒸留酒の美味しさを知ってもらおうと、5百万円を目標にして、READYFORでクラウドファンディングを実施した。期限の2023年4月末で目標の5百万円を達成し、最終寄附金額は733万4千円となった。
今回この蒸留酒を返礼品として用意しており、まさに高山さんが目指す地域復興にふさわしい取組である。
高山さんの活動は、今後もカンボジアの復興のために続いていく。(森岡)
「天国からの寄付ぎふと」寄付先団体Part5 寄稿:香美市こどもエコクラブ サポーター代表 時久(ときひさ)惠子(けいこ)
市民活動団体が活動を継続していくうえで、運営資金をいかに確保するかが大きな課題となっています。そこで、資金確保の仕組みとして「寄付ぎふと」プロジェクトがあります。今回は、「天国からの寄付ぎふと」の寄付先団体「香美市こどもエコクラブ」より寄稿していただきました。(うらい)
香美市こどもエコクラブ
香美市こどもエコクラブは、公益財団法人日本環境協会のJEC(全国こどもエコクラブ)に所属し、地球を守る様々な活動をしています。
3歳から高校3年生までが対象で、本年度は幼児・小学生16名、中学生5名、高校生9名とサポーター8名で活動しています。
私たちの活動テーマは2つあります。
○物部の自然林で起こっているシカ食害から山を守る。
○クールチョイス(CO2を減らすための賢い行動)を地域に広める。
年度初めに高校生のリーダーを中心に「今年やってみたいこと」を話し合い、こどもらしい発想で環境学習や環境保全活動を進めていきます。
物部の山を守ろう!
2005~2006年頃、奥物部の自然林はシカ食害で悲惨な状況になりました。増えすぎたシカが樹木や笹、野草等を食べ尽くし、山の緑が消えてしまいました。雨のたびに起きる山崩れ、台風のたびに根こそぎ倒れる巨木、被害の現実を目にして、ただただ唖然としたことでした。
そんな中、エコクラブのこどもたちは、専門家やボランティアの支援を得ながら、何度も山に登って、土留めのマット張り、植物の保護柵づくり、ブナ、ミズナラ、トチノキ等の植樹、下草刈りなどを黙々と続けました。
山を守る活動を始めて約20年。現在、関係機関等の長年の地道な努力により奥物部の自然体系は復活の兆しを見せていますが、そのスピードは遅々たるものです。
今後もエコクラブの重要な活動として継続していきます。
クールチョイス!
エコクラブは小学校低学年から継続しているこどもが多いので、環境を守ろうとする意識が高く、学習も積み重ねています。
今年の活動希望は、山を守る活動、ゴミ拾い、ゴミの分別とリサイクル、エコ工作、ジンデ池生物研究所(須崎市)との交流、水質調査・水生生物調査、物部川・夜須・室戸での体験活動、ダムの見学や、エネルギーの学習、環境をテーマにした企業の訪問、環境に関するディベート等。
たくさんの活動や学習をもとに、2~3月には生涯学習フォーラムやこどもエコクラブ交流会で、「クールチョイス」を中心とした発表や啓発を行う予定です。こどもたちが「やってみたいこと」に主体的にチャレンジし、成長していく姿を見るのが楽しみです。
天国からの寄付ぎふと
「天国からの寄付ぎふと」は、2020年から3年間いただきました。実を言うともったいなくて、有効に使える機会を待っていました。
今年はこどもたちとの話し合いで、NPO法人環境の杜こうち主催の「環境博2023」のはみ出しイベントとして、「よってたかって香美市でエコ!」を開催することにしました。
初めてのイベントに、県も市も共催してくださって、エコクラブの高校生を中心に企画・運営を進めています。香美市立図書館を会場に、7月30日(日)午前10時30分から午後3時まで行います。
エコクラブの活動発表、香美市環境課のお話、草笛体験教室、木工教室、石鹸作り、新聞バッグ作り、野草の食べ方見極め方、環境に関する本の読み聞かせ、環境に関する展示など多彩な企画です。
「天国からの寄付ぎふと」は、エコクラブのこどもたちが制作する案内チラシの印刷代に使わせていただくことにしました。尊いご寄付がこどもたちの活動を元気づけてくださり感謝しています。ありがとうございました。
こどもたちが想像力、行動力を思いっきり発揮でき、学びの多い楽しいイベントにしたいと思います。
問い合わせ先
香美市こどもエコクラブ
香美市土佐山田町須江451
連絡先:090-8694-0931(時久惠子)
公益財団法人
日本環境協会こどもエコクラブ(全国版)
https://www.j-ecoclub.jp/
「天国からの寄付ぎふと」とは
2010年にファンドレイジングプロジェクトを立ち上げ、寺村葬儀社と協働でお香典返しにかわる新しいお返しのかたちとして、2011年6月に「天国からの寄付ぎふと」をスタート。故人やご遺族の意思を汲み、故人の生涯をより社会的に意義のあるものとして後世にお伝えするために、寄付金はNPO高知市民会議を通じて、社会のために活動を続けている様々なNPO活動に役立てられています。