えぬぴぃOh!vol.87(2024年夏号)_web版

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身近に音楽を!~音楽で楽しく豊かな街づくりに貢献したい~NPO法人音の文化振興会(オトブン)15周年

 高知の演奏家の活動を広げる音の文化振興会(オトブン)代表の北村眞実まなみさんにこれまでの活動とこれからについてお聞きしました。

「演奏家」と「依頼者」をつなぐ

 北村さん自身がピアニストとして活動する中で、演奏する場所を探すのに苦労した。関係のある方の紹介などが多く、活動の場が広がることが少なかった。そこから「演奏家」と「依頼者」をつなげる活動をしたいと考えた。演奏家と依頼者の間に入り依頼者の情報を演奏者に伝えることで演奏家と依頼者間のトラブルが少なくでき、依頼者はイメージする内容の演奏家を紹介してもらうことができる。さらに、演奏家は演奏する機会が増えるようになる。NPO法人化をすることになったのは、ある人から「法人化してみたら?」と言われたことから。とにかくやってみようとは思ったが、正会員を10人も集めるのは難しいと思った。しかし、関係のあるところや演奏家の縁のある人に話してみると、申し出てくれる人が集まって、法人化することができた。

 プレイヤー会員が増え、演奏の機会を作る必要があったが依頼が多くないため、いろんな機関に600ケ所程度案内を送った。しかし、送っただけでは利用にはつながらない。最初は、自主企画で大きなコンサートを年に1~2回、小さなギャラリーコンサート等を10回程度定期的に開催し、順調に増えていった。その後、2014年からは、自主企画以外にも様々な方面に力を借り、事業を拡げていこうと企画した、子どもたちが無料で気軽に参加できる「おんがくのもり」を毎月1回開催。ホールなどと違い馴染みのある場所で楽しめる。会場は、旧高知市民図書館、県立文学館前(藤並の森)、旧高知こどもの図書館、高知聖パウロ教会の4ケ所で、交渉は大変だったが、現在もオーテピア高知図書館で「ライブラリーコンサート」として継続している(他はコロナ禍のため、休止中)。

 そうして、活動を継続し、プレイヤー会員は、NPO法人立ち上げ当初の20名程度から現在は50名を超えるようになった。

ライブも食事もできる楽しいオトブンカフェ「カプリ」

カフェサロン・カプリ4周年祭(2024年1月21日)
町内の方が作成したちぎり絵展も4月に開催

 新型コロナウイルス感染症が蔓延し始める直前の2020年1月にカフェをオープンした。

生演奏を楽しめるなど音楽中心のスペースになっているが、最初から考えていたわけではなく、たまたま場所ができ、カフェを作っているうちに形になった。音楽を演奏する場所にするなら、いろんな人に音楽に興味を持ってほしいと考えカフェに来てみると生演奏を聞くこともできるようにした。演奏家にとっても、演奏する場所があることによって集まる場となり交流し、新しいイベントを考える機会ができる。オトブンの拠点でもあるカフェでは、無料のコンサートが月に何度か行われたり、ギャラリーや様々なイベントを行い、地域の人も気軽に来やすい場所になっている。

毎月開催ジャズセッション
笑顔になる歌の会
町外の方歓迎の比島4丁目交流会
自主企画コンサート カフェデオコト

文化庁の助成金を活用したイベントの開催

 2021年12月に文化庁が行った「コロナ禍を乗り越えるための文化芸術活動の充実支援事業」の助成金を得て、「ミュージックバードフェスティバル2021」を開催し32組100名を超える演奏家が参加した。県民文化ホールと佐川町の桜座の2会場3ステージに加えてオンライン配信も同時に行い、二千円のチケット1枚で全てのステージに入場可能となっていた。助成金によって音響や演出にもお金をかけることができ、出演者にも出演料を支払えた。来場者にとっても久しぶりに生の音楽を楽しめる機会となった。

15周年記念イベント「音の文化祭り2024」の開催

 今年4月に高知市文化プラザかるぽーとで記念のイベントを行った。

ソプラノ 梅原千世さん
尺八 岸本寿男さん
サングラス

長年、北村さんと親交のあるシンガーソングライターの堀内佳さんが総合司会、シンポジウムのコーディネーターを務めた。

シンポジウム「オトブンができること」

シンポジウム「オトブンにできること」では、パネラー5人がそれぞれの音楽活動への思いについて話し、今後については、『オトブンのプレイヤーには、様々なジャンルの演奏家が集まって演奏する。それによって、聞きに来た人も新しい音楽を知ることができる』『さらに、大人も子どもも聞く機会があるようになれば、いろんな音楽を楽しむようになる』『生演奏を楽しむハードルを下げることができれば、もっと活性化する』など様々な意見が出された。

グレイグース
青空バンド

オトブンのこれから

 子どもが音楽を楽しめる「おんがくのもり」を継続し、近い将来高知県内すべての就学前の子どもたちが、生の音楽に触れられるよう裾野を広げていく活動をしていきたい。幼いころから生の演奏に親しむことで、生涯音楽を楽しめるようになってもらいたい。また、食や文化、様々な分野と連携して音楽との出会いづくりをしていきたいと考えている。他にも、「演奏会に参加する」ことが一番の演奏家の応援、すなわち地元音楽文化の発展に協力するということになるので、そういう意識を持っていただけるように「空席を埋めちゃろか会員」制度(簡単LINE登録)も推進していき、幅広い世代がいろんな音楽を楽しめる機会を作っていく。

7月発売おとのしずくvol.6

 演奏家と依頼者、楽しむ人をつなぐ、高知の音楽のプラットフォームの役割を持つオトブンは、これからも様々な音楽の出会いを人々に与えてくれるだろう。コロナ禍の影響で、いくつかのギャラリーコンサートが休止になっている。今後また、復活し、気軽に楽しめる音楽の場所が戻ってくることを私は楽しみにしている。

(松谷)

問い合わせ先

高知市比島町4丁目7番32号
TEL:090-6883-7538
e-mail:otonobunka@gmail.com
http://www.otonobunka.com

「発達障がいとその支援」寄稿:TOMOはうす 外部講師 松岡 智子

 「TOMOはうす」は発達障がい児やその家族、支援者をサポートする民間非営利団体です。設立は2012年、元小学校教諭や作業療法士、保育士などが運営しています。外部講師として活動中の元・小学校教諭 松岡智子さん(高知市教育研究所)に寄稿いただきました。 (堀内)

発達障がいとその支援

 人にはそれぞれ得手(でこ)・不得手(ぼこ)があります。でこぼこの差が大きいと、社会生活や学習、仕事で困ったことが多くなります。そんな症状を発達障がいと言い、おおまかに次のように分類できます。

 ADHD(注意欠如多動症)、LD(学習障がい)、ASD(自閉スペクトラム症)などです。そんな傾向のお子さんのいる家庭では、本人の振る舞いに周囲の理解が得られず対応に苦慮しています。具体的な例として診断されてもどうすればいいのかわからない、受け入れ施設が少なかった、小学校に入学して学習が始まると、環境変化からパニックが始まったなどの例があります。発達障がいのそれぞれの特性からくる生き辛さは、本人や周りの人の理解や工夫・個々に合わせた支援などで改善されます。そうすると本来の持っている得意なことや強味を発揮することができ、これまでに感じてきた生き辛さも軽減します。

 そんなご家庭の悩みやとまどいに寄り添ってサポートしようと、支援団体「TOMOはうす」を2012年に設立しました。活動内容は、保護者向けの「ペアレントトレーニング」や教職員向けの「ティーチャーズトレーニング」を実施し、発達障がい児支援を行なっています。また、外部講師を招聘して研修会を開催、私も外部講師としてお手伝いしています。

気持ちも見える化・気持ちの温度計(松岡智子さん)

保護者と支援者向け「アーリーバードプラスプログラム」

 ASD(自閉スペクトラム症)においては、保護者や支援者の悩みは特に深いものでした。支援の打開策を模索していたところ、活動を通じてご縁ができた「まめの木クリニック」(東京都)より、英国自閉症協会が開発したプログラムをご紹介いただきました。ASD(自閉スペクトラム症)の子どもと保護者と支援者向けのプログラム「アーリーバードプラス」(以下EBP)というもので、ライセンスは渡英して取得しました。「まめの木クリニック」はていねいなアセスメントを通じて、それぞれの子どもが持っている特性を理解し、子どもの発達を支えることを目指している先駆的で有名な存在で、EBPも日本で初めて実践している施設です。

 2019年に第1回「EBP」を開催、地元紙・高知新聞にも掲載され反響も大きく、注目を集めました。以来、2024年までの5年間で10回のプログラムを実施し70名余りが受講しています。

 参加した保護者からは、発達障がいの様々な特性を学んだことで、子どもの行動には意味があることや、いろいろな困難さを抱えていることが理解できた。発達障がいを肯定的に受け止められるようになったなどの声が寄せられました。とくに次の項目について良い変化が表れています。

【コミュニケーション】
自分が変われば子どもも変わること、実際に言葉のかけかたで態度が良い方向に変化した。
【行動理解と対応】
子どもをよく観察することで、子どもを怒る前に「なぜ?」と考えるようになった。視覚支援や計画表などを作成し見通しをたてる工夫をすることで、かんしゃくが減った、などです。

声も見える化

 保護者からは、悩みを共有し、共感しあえたことが何よりの収穫。前に進むチカラになったなどの感想が寄せられました。

親の会発足

 講座開催をきっかけに、保護者の中から、この学びを通して、保護者同士のつながりをカタチにしたいとの機運が醸成され「親の会」が結成、現在に至っています。支援にかかわる教職員、医療関係者からはEBPを学び、より実効性のあるサポートを行いたいとの要望があり、「支援者向けサポート講座」も開催しています。個別の症状に合わせた学習を行い、回数を重ねるごとに参加者が増え、今年度はすでに4回目を開講しています。

世界自閉症啓発デー「こせいにあわせたくふうてん」

 2023年は、国連で定めた世界自閉症啓発デー(毎年4月2日)にあわせて「こせいにあわせたくふう展」を高知市南御座の蔦屋書店で開催、地元高校生にもイベントチラシのデザイン、レイアウトなども協力いただきました。当日の模様は、地元テレビ局、新聞各社の取材もあり、反響の大きいのと関心の高さに驚きました。スタッフ、保護者にとっては励みになりました。今年も同時期に2回目を開催、多くの皆さまにお越しいただきたいと考え、高知を代表する繁華街の帯屋町で行い、300名越えの皆さまにご来場いただきました。昨年同様、発達障がい児の暮らしの工夫、作品なども展示しました。

バランスディスク
これをお尻の下に敷いて座ると、いい姿勢をある程度保って座れるようになったお子さんも!
足つぼマッサージ機、これを椅子の下に設置。この上に足を置くと、じっと座っているのが苦手なお子さんも座る時間が長くなったそうです。
集中しづらいお子さんに、ストレス解消グッズのボールを持ってもらうと、にぎにぎしながら集中力アップ!このボールは、硬さがいろいろあって、お気に入りがみつけやすい。子どもたちに、大人気だそうです。

 新たな試みとしてトークセッションも開催、保護者の立場から服部雄一郎さん、麻子さんご夫妻を囲みました。服部さんは国内外で暮らし、今は香美市在住。雄一郎さんは文筆・翻訳家で著書「サスティナブルに暮らしたい」などでも有名な方です。お二人の高知大学教授とTOMOはうす代表を交え実りある語らいの場となりました。参加者からも質問がたくさん飛び出し、和気あいあいとした雰囲気でした。

 「TOMOはうす」は一貫して発達障がい児への支援に保護者と支援者が真正面から向き合い、子どもの特性や成長に寄り添うことを真剣に考えています。とどまることなく活動を進化させ、内容もより深化させて、EBPを高知県の様々な地域に普及させることを目指します。しかしプログラムライセンスは英国で取得しないといけない点は課題です。今後は、日本独自でも同様のプログラムが開発され、広く実施されることを願って実りある活動を続けていきます。

 最後に、2024年2月24日に開催された「こうちNPOアワード2023」の「こうちNPOアワード部門」で大賞をいただくことができ感謝の気持ちでいっぱいです。本当にありがとうございました。 (※「こうちNPOアワード2023」については7ページをご覧ください。)

問い合わせ先

TOMOはうす
高知県吾川郡いの町6406-4
電話:090-7786-7472(代表:久武夕希子)
メール:tomohouse2012@gmail.com
http://tomohouse2012.web.fc2.com

みんなで考えてつくる美術館 私たちの町には美術館がありません。美しい砂浜が美術館です。

 海や山などの自然に触れると気持ちが落ち着きますが、このような素晴らしい環境と共存するためには一人ひとりができることを見つけることが大切です。今回は、Tシャツアート展に伺って、人と自然の関わり方などを目に見える形で伝える活動をされているNPO砂浜美術館の有光優衣さんにお話をお聞きしました。

目に見える自然の作品

 高知県黒潮町の入野海岸と聞いて何が思い浮かぶでしょうか。毎年5月に開催されるTシャツアート展を思い浮かべた方もいらっしゃると思います。砂浜美術館ではTシャツアート展をはじめとする様々なイベントで、「ものの見方を変えると新しい発見がある」ことを伝えています。

 漂流物から周りに生えている植物まで、約4キロメートルにわたる砂浜から見えるものすべてがアート作品である砂浜美術館は、自然保護ではなく自然との付き合い方について考える場所になっています。訪れる人みんなで保ってきた美しい砂浜でゆらゆらと揺れる854点のTシャツは、どこから見ても楽しい景色が広がっていました。

第36回Tシャツアート展(2024年5月1日~6日)
日替わりの楽しいイベントも開催され、砂浜美術館が1年で一番盛り上がる6日間!!
Tシャツ作者×来場者×自然。みんなでつくりあげる大きな風景作品“Tシャツアート展”

みんなでつくる美術館

 有光さんが砂浜美術館に入職したのは3年前で、松原から見た砂浜に魅力を感じたことがきっかけだそうです。他にも、砂浜と松原の向こうには地域の方のらっきょう畑があり、潮風のキルト展に合わせてきれいな花が咲くように協力してくれます。その他にも、地域の方はイベントの準備を手伝ってくれたり、Tシャツアート展のような定期的なイベントの時期が近づくと気にして声をかけてくれたりするそうです。地域住民にも受け入れられ、スタッフだけでなく入野海岸に訪れる人みんなで作品を維持していく形が魅力的だと感じました。

潮風のキルト展(11月)
大小さまざま、個性豊かなキルトたちと、赤紫色のらっきょうの花畑がつくる穏やかな風景は、秋の砂浜美術館の代表作品です。

取材を終えて

 今回お話をお聞きして、入野海岸とそれに関わる自然が、美術作品という考え方によってたくさんの人に大切にされてきたことが感じられました。砂浜美術館での私のお気に入り作品は、砂浜の後方に咲いているハマヒルガオです。

(德弘)

問い合わせ先

NPO法人 NPO砂浜美術館
高知県幡多郡黒潮町浮鞭3573-5
ビオスおおがた情報館内
TEL:0880-43-4915
E-mail:nitari@sunabi.com
https://sunabi.com

市民のチカラが社会を変える~こうちNPOアワード2023~

 2024年2月24日に、「こうちNPOアワード2023」が開催されました。今年で3回目を迎える公開プレゼンテーションには、こうちNPOアワード部門に6団体、ワカモノ未来賞部門に6団体の応募がありました。

NPO高知市民会議20周年記念事業

 高知県内で活動する社会貢献団体の活動を資金面から支援することを目的として2021年度に「こうちNPOアワード」を創設しました。NPO高知市民会議より500万円を拠出し、「こうちNPOアワード」と「ワカモノ未来賞」の2部門で総額50万円を分配し、高知の社会貢献活動を顕彰、応援しています。
 また、こうちNPOアワード運営委員会を設置し、社会の実情に応じたテーマを設定しています。

審査会

こうちNPOアワード

 2023年度は、いろいろなシンカ(進化・深化・新化)を遂げ、コロナ禍を経て、これからの活動をどうシンカさせていくのか。「シンカするチカラ」をテーマに、シンカしてきた実績と今後の活動で目指すシンカについて評価しました。対象は、高知県内を拠点に3年以上の活動実績がある非営利の団体(法人格の有無は問わず)。

ワカモノ未来賞

 1年以内に実施しようと考えている企画、新たなことにチャレンジする企画を応援しています。対象は、高知県内を拠点に29歳以下の若者が中心となる個人もしくは団体。

審査講評と贈呈式

 各団体より3分間のプレゼンテーションと5分間の質疑応答を行い、審査員が採点とコメントを記入します。審査表の合計点数によって、大賞、凖大賞、奨励賞、ワカモノ未来賞を選び賞金額を決定します。そして全ての団体に対して審査員からでた講評を郵送しました。
 また、4月6日に行われた贈呈式では、表彰状と賞金の授与、NPOアワード受賞団体による活動紹介、ワカモノ未来賞受賞団体には受賞企画内容を3分以内で発表してもらいました。

表彰状&賞金の授与
受賞企画内容の発表
集合写真

【こうちNPOアワード】
大賞:TOMOはうす/賞金20万円
準大賞:NPO法人ゆめ・スマイル/賞金10万円
奨励賞:Different/賞金5万円
【ワカモノ未来賞】
きみのたねこうぼう/賞金5万円
高知清掃隊/賞金5万円
Revival Your Project/賞金5万円

感想

 審査会の日には、「ワカモノ未来賞2022」の実施報告もありました。1年間の取り組みを通して大きな成長を感じました。
 また、個人や団体同士の交流を図る時間を設けることで、繋がりができ、新たな企画が生まれると思いました。

(うらい)

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