こどもが運営するまち とさっ子タウン 寄稿:とさっ子タウン実行委員会 実行委員長 片岡 優斗(ゆうと)
コロナ禍で、通常開催ができていなかった、こどもが運営するまち「とさっ子タウン」が、2023年8月19日(土)・20日(日)高知市文化プラザかるぽーとで、4年ぶりに制限を設けてですが、開催されました。
そこで、二代目とさっ子タウン市長を経験し、今年度とさっ子タウン実行委員会実行委員長として携わった片岡優斗さんにとさっ子タウンに寄せる思いを寄稿していただきました。(森岡)
とさっ子タウンとの関わり
私はとさっ子タウンの二代目の市長を小学校5年生から中学校1年生まで務めていました。参加のきっかけは同級生からの誘いでしたが、今思えばあの時の誘いに乗っていなければ、4年ぶりの開催での実行委員長として関わることも、この記事を書くこともなかったと思います。
中学校に入ってからというもの、とさっ子タウンと離れた生活を送りいつしか大学生になっていました。もうその頃はとさっ子タウンについては「自分は元市長だった」ということしか記憶に残ってはいなかったです。
しかし、大学に入学してから、高校の同級生で同じ学年の杉本さんからとさっ子タウンに関わってみないかと誘われました。ここでもこの誘いに乗り、私は実行委員会に足を運びました。会議室に入る前は私のことなど覚えている人はいないだろうと思っていました。でも現実は温かく優しいものでした。約6年ぶりの再会にもかかわらず、温かく迎えられて自分の新たな居場所を見つけられた気がしました。
今回のとさっ子タウンを振り返って
今年のとさっ子タウン2023は、2019年から新型コロナウイルスの影響による中断をはさみ約4年ぶりの開催となりました。
コロナ禍以前から当日スタッフや実行委員として関わってきていましたが、今回実行委員長として臨み、自分がスタッフとしてみていたものよりも膨大でかつ、幅広い仕事を行っていたことに驚きました。自分がとさっ子タウン市長時代に感じていた感性や見方、そして教育学部で学んだ対応などをフルに活用しつつ、支えてくださる大人の方や専門家のみなさんとともに市民がいかに楽しく過ごせるかを常に考えて取り組みました。
今年の開催はコロナを踏まえ、人数を制限しての開催であったため、抽選から漏れてしまった子どもたちもいる中で、今回参加した子どもたちやこれから参加する子どもたちの中から将来の高知を担う人物が一人でも出てきてほしいと願い、また自分のように市民から実行委員、そして実行委員長としてこの活動に関わってくれる人が出てくることで活動としての好循環を図りたいと思いました。
私にとってのとさっ子タウンとは
私にとって、とさっ子タウンとは「第二の家」です。私はとさっ子タウンに関わる中で、数多くの経験をしてきました。
人が成長するにあたって経験というものは大きな存在であると私は考えています。その経験を家庭が提供することが多い中で、私は、とさっ子タウン市長として「リアルな高知県知事や高知市長との対談」「会場施設の陳情」、実行委員として「ブースを担当して実際に働かれている専門家の方とのやり取り」など、同い年の人とは一線を画す社会経験ができました。同時に、私を含め高校生や大学生実行委員を温かく迎えてくれる大人の実行委員の方がいるこの場所が、広い意味での「家」のような存在となっています。
最後にこの「家」を次の世代に受け継ぎ、継承していく中で、これからも一人の実行委員としてこの活動に関わり続けたいと思います。
こどもが運営するまち
とさっ子タウン
https://tosacco-town.com
本格再始動!「第70回よさこい祭り」競演場を支えた若者たち ~よさこい競演場を通した地域活動の現在地~
4年ぶりに高知の夏の風物詩「よさこい祭り」が帰ってきた。今年、「愛宕競演場」、「菜園場競演場」では、高知県青年団協議会(以下、青年団)と協力して、高校生「競演場ボランティア」の募集を行った。企画に込めた思い、参加した高校生の感想、受け入れた競演場スタッフの声を中心に、今年の夏「よさこい」を振り返ってみたい。
高齢化に悩む商店街
コロナ禍以前から、どの競演場・演舞場も、慢性的なスタッフ不足に悩まされていた。大きな理由は、商店街の衰退と、スタッフの高齢化。「このままやったら、いつか競演場(演舞場)がなくなりゃせんかよ」といった不安が渦巻いていた。
風穴を開けた愛宕競演場 矢原道貴さんの挑戦
そんな中、若きよさこい人・矢原道貴さんによる、愛宕競演場の盛り上がりが、一つの希望となっていた。矢原さんは、「よさこい」に惚れて高知に移住した若者。当初は踊り子として「よさこい」に関わっていたが、縁があって愛宕競演場のスタッフになり、若い感性でこれまでの常識にとらわれず、県外のよさこいファン向けて「競演場ボランティア」というアイデアをアピールして、愛宕競演場の慢性的な人手不足を解消することに成功した。またSNSを活用して、本番までの準備を単なる作業ではなく、心躍る「わくわく」に変えるなど、人と人の心を巻き込むアイデアを実行していた。そんな彼と青年団が出会うことで、今回の企画は実現した。
青年団が大事にしたこと
今回の企画で青年団は、単なるイベントのボランティアスタッフではなく、「よさこい」という高知の文化を若い人たちに知ってほしい。ゆくゆくは競演場(演舞場)のスタッフとして「よさこい」の支え手が増えてほしいとの願いを込めた。そのためボランティア希望者のカリキュラムには、「よさこい」の歴史や、よさこいレジェンドの思いを聞く『事前学習』を組み込んだ。
7月中旬、県内の各学校にボランティア募集の案内がされるやいなや、あっという間に定員の20名が集まった。
怒涛の二日間 参加した若者が感じたこと
- いつも踊る側だったので、支える側で踊り子の笑顔を見ることができて、すごくうれしかった。(高校一年 女子)
- よさこいに関わることは高知の人にとって特別なことなので、愛宕や菜園場だけでなく、他の会場でも受け入れられるようになればと思いました。(高校一年 女子)
- 暑い中大変だったけど、よさこいを運営する側の立場に立てて、とてもいい経験ができました。(高校二年 女子)
- 踊り子さんたちから元気をもらえました。(高校二年 女子)
- 見る楽しさもあるけれど、裏で支えるという経験は、とても楽しかった。(高校三年 女子)
- スタッフたちのよさこいにかける思いの強さを感じました。様々な人とのコミュニケーションが自分を元気にさせてくれました。(高校三年 男子)
- ボランティアや運営の方たちがいなければ、よさこい祭りは成り立たないと思いました。(高校三年 男子)
- よさこいの裏方仕事を体験して、あらためてすごいお祭りだと感じました。(高校一年 女子)
若者を見守った大人たちが感じた「これからのよさこい」
矢原道貴さん(愛宕競演場)
学生さんたちがこんなに興味を持ってくださっていることにびっくりしました。そして自分たちも新しい気付きをいただきました。高知発、世界に広がるよさこい祭りを地元の人たちで盛り上げて行くこの取り組みは、今高齢化などで苦しむ競演場として本当に助かります。
細谷修平さん(菜園場競演場)
菜園場商店街としては4年ぶりに競演場としてよさこい祭りを開催することができました。 学生さん達のおかげで大きなトラブルなくよさこい祭りを終えることができました。 年々チーム数が減っていたりしますが、こういう若い学生さん達と一緒に盛り上げることができてよかったと思っております。 次世代にも受け継がれるような祭りにするためにみなさんと一緒にこれからも頑張っていきたいです!
競演場に見つけた新たな役割について
今回の活動で若者たちが、「よさこい」を通して地元を知り、地元に愛着を持つ、そんなきっかけを作る役割が競演場(演舞場)にはあり、競演場スタッフからも、あらためて自分たちの祭りを大事にしたいとの声が聞こえてきた。
(北川)
高知でフェアトレードを考え伝える 寄稿:高知大学 国際協力団体すきっぷ 代表 佐藤涼花
学生団体が10年以上市民活動を継続するのは、容易ではないと思います。そんな中、16年続けてこられた高知大学国際協力団体すきっぷの活動について代表の佐藤さんに紹介していただきました。(松谷)
フェアトレードとは
今、主に海外の生産現場では低賃金労働・児童労働・環境破壊・貧困など多くの問題が生じています。そこで必要とされているのが「フェアトレード」です。「フェアトレード」とは、開発途上国の原料や製品を適性な価格で継続的に購入することにより、立場の弱い開発途上国の生産者や労働者の生活改善と自立を目指す「貿易のしくみ」です。すきっぷはこのフェアトレードの理念に賛同し、「高知でフェアトレードを考え伝える」ということを軸に、イベントでのフェアトレードコーヒーや雑貨の販売を通し国際協力活動を行っています。
団体の発足と活動
すきっぷは2007年に高知大学のサークルとして発足し、2023年度現在4回生4名、3回生5名、2回生3名、1回生3名の計15名で活動しています。すきっぷでは学年に関わらず役割に携わり、イベント出店の際にも一人ひとりが意見を出しながら活動しています。メンバーそれぞれが主体性を持つことで、新たにすきっぷで活動したいことも生まれ、発展しながら継続できているのだと思います。
新型コロナウイルスによる制限がかかる以前は、スタディツアーとしてカンボジアやタイ、ラオスに行き研修もしていました。今後もフェアトレードについての理解を深めていきたいと考えています。
販売している商品について
すきっぷが販売しているフェアトレードコーヒーは、ラオスで作られているものを仕入れています。自分たちで美味しい淹れ方を模索し、考えた方法でドリップして提供しています。
また、雑貨はポーチやエコバッグ、コースター、イヤリングなどフェアトレード商品を購入したことが無い方でも手に取りやすいような商品を扱っています。写真のポーチは「Canvas」の商品です。タイの山岳民族であるリス族やモン族の方がひとつひとつ丁寧に手作りしたポーチです。
フェアトレード商品には労働環境の改善や伝統文化の保全に繋がるという良さだけでなく、その商品自体に利便性や日本の商品にはないかわいさが備わっていることも魅力です。私たちはこれらのフェアトレード商品を提供し、多くの方に手に取っていただくことにより、フェアトレードを考えるきっかけになってもらえればと考えています。
12月9日に開催されるNPOフォーラムにも昨年に引き続き、出店させていただきます。フェアトレードコーヒーや雑貨を販売予定です。ぜひ、私たちと一緒にフェアトレードについて考えませんか。
高知大学
国際協力団体すきっぷ
Instagram:skip_kochi_uni
X:@skip_kochi_uni
積極的、継続的な参加を目指して 寄稿:高知県立牧野植物園 植物研究課 主査 松岡 亜矢子
牧野博士ゆかりシリーズ②は、高知県立牧野植物園で活躍するボランティアの活動の様子を、2023年6月までボランティア担当をされていた松岡さんに紹介いただきました。(永野)
どんな活動を?
牧野植物園では、来園者に対するサービスの向上、県民との連携による事業の実施と生涯学習の充実を図る目的でボランティアを募り、現在の登録者数は44名となっています。
園が主催する植物教室やイベントの運営補助、企画展での展示監視やガイドの後方支援、さらには、季節の草花を用いた生け花作品の展示や園地での除草作業の手伝いなどの活動を通じて、多方面から植物園事業をサポートいただいています。
共有から生まれた〝花〟
ボランティア担当として活動に携わる中、とりわけ印象に残っているのは子ども向け教室の準備でのひとこま。
その回は、花のつくりやはたらきを知るため「ユリ」の花を解剖、観察したのち、模型をつくるといった内容で、活動の準備のためボランティア数名に集まってもらった時のことでした。講師と打ち合わせして模型の仕様を固めていたのですが、特徴をもっと分かり易く示すことができるのではないか、一人のボランティアの声に端を発し、アイデアを出し合い工夫を凝らし、試行錯誤の末、姿を現したのはまるで本物の「ユリ」!。より良いものを提供したい、皆がその思いで一つになり、活発な意見交換を経て得られた結果は充足感を生み、活動へのモチベーションを高めるきっかけになりました。
「楽しい」を原動力に
「今日も楽しませてもらってます!」あるボランティアさんの口癖ですが、聞く度なんとも言えずうれしい気持ちになります。
近年、新型コロナウィルスの影響により活動の機会が激減。活躍の場が失われることで意欲を欠き、そのまま活動から遠ざかってしまった方も。今後に向け、積極的且つ継続的な参加を可能にするには、活動の中で気づきや学びを得、「楽しい」と感じてもらえること、それがなにより大切だと考えます。
昨年秋のこと、イベント運営補助ボランティアを対象に専門家を招いて講座を実施。受講後臨んだイベントでの皆の様子は、自信に満ち笑顔に溢れとても輝いて見えました。「学んだ知識を活かせる場があることで、こんなにも手応えを感じられるのか」「楽しい気持ちをお客さんと共有できたことが何よりも幸せ。次回が待ち遠しい」そんな感想をいただくに至りました。
植物研究に生涯を捧げた牧野博士。好きを追求したその日々もきっと「楽しい」の連続だったに違いありません。博士に倣い「楽しい」を原動力に、ボランティアも活き活きと活躍できる、そういった施設でありたいと改めて強く願います。
問い合わせ先
高知県立牧野植物園
高知市五台山4200-6
TEL:088-882-2601
https://www.makino.or.jp