「こうちNPOアワード2023」受賞団体の紹介Part2 寄稿:NPO法人ゆめ・スマイル 理事長 江口千代美
2024年2月に開催しました「こうちNPOアワード2023」にて、〝こうちNPOアワード部門〟で準大賞に輝いたNPO法人ゆめ・スマイル理事長の江口千代美さんに寄稿していただきました。(うらい)
ゆめ・スマイルの活動
保育所勤務等を経て退職後、宿毛市内の小中学校で「絵本の読み聞かせ」のボランティアをしていた時、ある小学校の読み聞かせが終わって駐車場に帰る途中に出会った子どもに衝撃を受けました。一目でネグレクトとわかる少年でした。
宿毛に「子ども食堂を作ろう!」と決心し、仲間たちと2017年1月に「子ども食堂」を開設しました。
2020年10月には一緒に活動していたイベント団体「World smile」とNPO法人ゆめ・スマイルを設立。
居場所事業「みんなのおうち」を火曜、木曜日午後1時から6時まで開所。1時から4時までは地域のひとたちが訪れ、4時からは放課後の子どもたちが利用しています。
利用者、スタッフも笑顔で楽しく心安らぐ居場所として継続して取り組んでいます。
子ども食堂の現在
コロナ禍の3年間「子ども食堂」はお弁当で対応、継続して取り組んでいました。この間、高齢者の利用も増えています。
2024年4月から元のバイキング形式の子ども食堂を実施しています。
お弁当希望者には要予約で対応しています。
居場所の現在
「ただいま」「お帰り」で始まる「みんなのおうち」では、「近所のおばちゃんたちがいる」楽しい場所として子どもたちの口コミで広がっています。毎回、放課後学校帰りの子どもたちで、にぎやかです。
地域に根差した活動
毎月第3土曜日に開催している「子ども食堂」はイベントと併用しておこなっています。
コロナ禍を経て、子ども向けイベントも各団体が取り組んでいて、子どもたちにとっても選択肢が広がっているという利点でもありますが、ゆめ・スマイルでは誰でもが参加できる、季節感のある楽しいイベントを開催しています。
イベントの企画、実施
年度の終わりにスタッフと来年度の行事予定を計画します。
お寺での「小さな夏まつり」や「ハロウィン」などは毎年継続して実施しているイベントで、子どもたちや地域の人も楽しみに待ってくださっています。
旧市役所、空きスペースの会議室では草花を使ったアレンジメント、押し花、七草粥体験、避難訓練などのイベントを開催。
私たちも今後、ワークショップやフリマなど活動の輪を広げたいところです。草笛体験教室、木工教室、石鹸作り、新聞バッグ作り、野草の食べ方見極め方、環境に関する本の読み聞かせ、環境に関する展示など多彩な企画です。
「おうちカフェ」の現在
今できることを実践する。
「おうちカフェ」は継続して事業に取り組んでいる中から生まれました。
2024年1月から利用者さんの要望に応え「高齢者食堂・おうちカフェ」を開設しました。
毎月、第4木曜日11時からで毎回40人ほどの利用があります。
ネットワーク会議の開催
宿毛市、宿毛市社会福祉協議会の関連職員、地域の事業所などと連携し隔月でネットワーク会議を開催。
利用者にとって過ごしやすい場所の提供など情報交換し、連携することでアイディアが生まれ実践しています。
未来につなぐ活動
高齢化率40%(2023年9月現在)が顕著な宿毛市では、19歳以下の子どもの数は7%です。現在の環境下で、子どもを取り巻く状況は決して充実しているとはいえない状況です。
「宿毛小学校」の場合、学童保育(有料)はあるものの、高学年になると入れません。宿毛市は共働き世帯が多く、私たちがNPOを立ち上げたのも「居場所事業」の充実でした。
現在、火曜、木曜の午後1時から6時までスタッフを配置し事業を行っています。いつも子どもたちでにぎわっています。曜日を増やしたいところですが、資金不足です。
高知県からの補助金、高知県社会福祉協議会の助成金、民間の団体からの助成金、寄付金、会費、イベント収入が現在の収入源です。
その他の活動
宿毛市主催の産業祭や事務所のある本町ふれあい夜市にも参加(写真は本町商店街土曜夜市2024.8.24)
バトンを渡す
私を含め、スタッフの高齢化も否めません。事業を継続するために私たちもアイディアを出しながら、市や他の団体に働きかけていく予定です。
一般財団法人HATAの協力もいただきながら、同じ思いの若い人たちと連携し、次世代につなげていきたいと思っています。
宿毛で生まれ、育ったことに誇りを持ち、ふるさとを思う子どもが多く育ってほしいです。宿毛に若者がいっぱいいる、活気あふれる町になるよう私たちも楽しみながら日々活動を続けていきます。
広報活動
ゆめ・スマイルHP、チラシ、宿毛市の広報誌、SNSへ毎回発信しています。
問い合わせ先
NPO法人ゆめ・スマイル
高知県宿毛市中央1丁目1-30
みんなのおうち
連絡先090-5910-0989
https://www.yumesmile.com
とさっ子タウンの成長と未来 ~実行委員による鼎談から~
2009年に始まった「とさっ子タウン」(以下「とさっ子」)。今年度で、こども市民の参加者は、延べ4435人に達しました。
今回は、とさっ子市民を経験し社会人になった今日まで実行委員として活動する松本佳奈さん(以下「松」)、田部祥一朗さん(以下「田」)、岩﨑怜さん(以下「岩」)に、それぞれの参加のきっかけから今後のとさっ子に対する決意まで語り合ってもらいました。
とさっ子タウン参加のきっかけ
〖松〗親に勧められて小4から中1まで一人で参加しました。
〖岩〗母親に勧められ、小6を除き小4から中3まで毎年一人で参加し、現地で友達を作りました。
〖田〗姉の影響で小4から中3まで皆勤賞で参加しました。
実行委員はいつから?
〖松〗大学1年のときにボランティアで参加し、翌年から実行委員として関わっています。
〖岩〗高校1年でボランティアとして参加し、高校2年からは実行委員を務めています。今年念願の濱長の打上げ参加がかないました。
〖田〗高校は嶺北高校だったので、昨年から実行委員をしています。
とさっ子参加時のエピソード
〖松〗荷物預かりの起業や駅弁プロジェクトに参加し、様々な経験をしました。自分で稼ぎ、商店街で使うことが楽しかったです。
〖岩〗一人で参加して多くの友達を作りました。主に食に関するブースを経験しました。駅弁プロジェクトでは魚が苦手だったけど、いろいろな経験をさせてもらいました。
〖田〗警察や消防、市役所など公務員の仕事が好きでした。起業をしてお金持ちにもなりました。中3の時は稼ぎすぎて働かずに商店街で食べ物を爆買いし、スタッフにプレゼントしたことが思い出です。
とさっ子が自分の人生に与えたこと
〖松〗とさっ子は、高知に残るきっかけとなり、素敵な大人との出会いや賛同企業の存在が、仕事に対する意識を高めました。
〖岩〗とさっ子への参加から、地域に根付いた活動をしたいと思い、現在の仕事選択につながり、年齢を超えたコミュニケーション能力向上にも役立っています。
〖田〗外交的な性格に変わり、チャレンジする勇気を持つようになりました。とさっ子での経験が原動力となっています。
ガイダンスで、「しばてん」に扮して説明する松本さん(左上)と田部さん(右上)
今後のとさっ子に対して
〖松〗とさっ子のスピリッツを引き継いでいくことが必要で、自分たちもできることをやる姿勢が必要です。押し付けではなく、子どもたちにとさっ子の体験を通じて高知の良さに気付いてもらえるきっかけとしてもらえる取り組みにしたいです。
〖岩〗頼るだけでなく、支える側になりたいです。今年の経験から、少しは成長した姿を見せられたかなと思います。次年度からは、全体を見ながら支えていきたいです。
〖田〗副実行委員長としては、意見を言いやすい実行委員会を作りたいです。意見を言えなかった人もいたと思うので、そういうところを汲み取っていけるようにしたいです。
また、今回のとさっ子で参加してもらった障害があってもロボットでまちを楽しめるバリアフリーショップの取り組みはインパクトがありました。現状維持も大切ですが、毎年新しい風を吹かし続けられたらと思います。
毎年とさっ子タウンに参加していた3人の幼い頃の姿を思い出します。今では、すっかり実行委員会の中核を担うメンバーとして活躍しており、頼もしく思います。これからは彼ら彼女らが新たな世代を未来へ繋いでくれることを期待しています。
畠中洋行(とさっ子のきっかけを作った元NPO高知市民会議 事務局長)
とさっ子タウンとは
子どもだけが市民になれる「こどものまち」です。
このまちでは、小学校4年生から中学校3年生までの子どもたちが「市民」となり、仕事や消費、まち運営など、現実の社会そっくりの活動をしています。仕事は、市役所や税務署、銀行、ハローワーク、新聞社や飲食関係の仕事、創作関係や娯楽関係など、50種類近くあります。そのお仕事を専門家さん(プロの人)から教わりながら体験をすることができます。
最後に
鼎談を通じて、とさっ子の経験が社会人となった3人に大きな影響を与え、実行委員会の運営も含めて「とさっ子愛」が感じられる内容でした。彼らが次世代に繋げていく姿勢を頼もしく思いました。
(森岡)
問い合わせ先
とさっ子タウン実行委員会
高知市市民活動サポートセンター内
TEL:088-820-1540
https://tosacco-town.com
高知で恋しよ!!応援団 寄稿:高知工科大学 CUBE 代表 黒岩小雪
高知工科大学では婚活を支援する団体があります。活動について、代表の黒岩小雪さんに寄稿していただきました。(松谷)
様々なイベントを開催してきた
CUBEは2017年に発足し、自分たちがやりたいことを形にし、様々なイベントを開催してきました。現在は、その中の婚活支援を引き継いでいます。先輩方は自分たちの時間を有効活用し地域に貢献できるものを考え、高知県の課題である少子化対策に取り組んでみようと始めたそうです。2024年現在は4回生3名を中心に活動しています。
応援団に団体登録
「高知家の出会い・結婚・子育て応援団」に応援団として団体登録し、私たちの企画した婚活イベントを県が運営する「高知で恋しよ!!Event」を通じて告知し、登録会員様が申し込みできる仕組みです。私たちは、結婚に前向きな方を支援するため、お引き合わせの場を提供できるよう活動しています。これまで多くの方に参加していただき、県の少子化対策に出会いの機会の提供という形で貢献してきました。
コロナ禍で活動中断
新型コロナウイルスの拡大により、約3年間イベントを開催できずにいました。その間に先輩方が卒業し、婚活団体CUBEとしての活動ができていない状態でした。しかし、無くなってしまうのはもったいないと思い、引継いで活動を行っています。といっても、イベントの経験も無く、ノウハウも引き継いでいない、まっさらな状態で活動を再開したため、最初は右往左往しながら企画・運営を行ってきました。
初回は、参加者がなかなか集まらず少し寂しい雰囲気でのスタートでした。また、マスクを着用した参加者が多く、コミュニケーションの大きな壁となりました。さらに、イベントを重ねるたびに課題にぶつかりました。
参加しやすい雰囲気づくり
応募者は、イベントの雰囲気や金額、内容などあらゆる観点から選びます。そのため、まず参加者から信頼を得る事だと感じました。それからは、私達だからこそできることを考え、奮闘してきました。婚活と聞くとどうしてもハードルが高く、参加できても思うようにお話できない方も多く居ました。そこで、より気軽に会話ができるよう、フリータイムにカードゲーム(ito)をやって、お互いの価値観の違いを感じてもらったり、席替えのタイミングで椅子取りゲームなど楽しんでもらう内容を企画し、学生だからこそできる少しラフで友達を作りに来るだけでもいいような雰囲気にすることで、ハードルを下げた形にしました。
参加者のニーズをつかむ
年代別のニーズの違いにも苦戦しました。同じ内容を違う年代で開催すると、年代ごとの集客にばらつきが出てしまいました。そこから試行錯誤の結果、20代は季節のイベントに合わせたものやフリータイム多めが好まれる、30代は、年齢差が少ない、40代は、落ち着いた雰囲気の会場でフリータイムはなし、など年代に合わせたニーズを特定することができました。
今では、安定して毎月3回イベントを開催出来ています。また、活動を続けることで他の団体と共同開催できるようになりました。私たちは、学生だからこそできる内容でより多くの方に、素敵な出会いを提供できるようこれからも婚活運営に励んでいきたいと思っています。
CUBEの皆さんが工夫して参加者が楽しめる雰囲気を作ってくれ、良い出会いのきっかけになっていると思います。これからも学生ならではの楽しい出会いの場を作って行ってほしいです。
「森の国こうち」はどこへ向かうのか! NPO法人自伐型林業推進協会 理事 四宮 成晴(しのみや しげはる)
「国の宝は山也 山の衰えは則ち国の衰えなり」(江戸時代の林政論 ※林野庁ホームページ資料編より抜粋)と、先人は説く。森林は人間が敬うべき象徴の一つだった。
「森の国こうち」の半分以上が・・・
「森林県こうち」と言われる我が高知。森林率84%は、都道府県第一位である。そして人工林を多く持つ県(65%)でもある。この森林の半分以上を持つ高知の人工林を考えてみたい。
人工林は、人が植えて人が育てて木材として人が利活用するためにつくられた〝林〟である。戦後、復興策の柱の一つとして木材増産を目的とする「拡大造林政策」が始まる(1996年終焉)。スギ、ヒノキ、カラマツなど成長が早く加工しやすい針葉樹(人工林)が、広葉樹林・天然林・自然林に代わって植えられるようになる。しばらく「拡大造林政策」は見直されず、国は、木材は主要資源であり経済成長の主要な柱として人工林化へ猪突猛進。結果、ざっくりと言うと、我が国の森林の約半分(40%)が人工林で、かつ人の手で管理しなければならなくなったということである。一方、この人工林の増加に反比例するかのように林業従事者が激減する。昭和30年代に50万人近くいた山で働く人たちは1/10以下にまでに減少。そして今、人工林の放置が進み、山は病んでいく。
我が国の林政が大きく動き出す・・・
令和に入り、国はこうした情勢や形勢を鑑み、手入れが行き届かない樹齢50年以上のスギ・ヒノキが50%を超えたことを事由に大きく動き出す。言葉を選ばずラディカルな言い方をすれば、スギ・ヒノキなどの人工林をリセットとするという手法だ。
長期にわたり民間事業者が国有林を整備できる樹木採取権設定、山林所有者の意向に踏み込むことができる森林経営管理法の新設、花粉症発生源対策として30年後に全国のスギを半分にする計画立案。これにスギ伐採(花粉症対策)重点区域を付加。高知県では高知市、南国市をはじめ9自治体が位置付けられる。そしてスギを伐ったあとに花粉の出ない少ないスギ(スギ精英樹クローン)の植林を指示。関連して、2024年度から一人当たり千円(住民税に上乗せ)を徴収する森林環境譲与税もスタート。
次から次へとウルトラCを繰り出す国策は、人工林をリニュアルしていく。まずはてっとり早く、適齢期(40~60年生)を迎えた人工林を皆伐(山にある木々すべてを伐ること)し、新たに植林するということ(再造林)に多大な補助金を出していく。
どうする「森の国こうち」・・・
さて、ここで大きな問題に直面する。皆伐後、裸地となった山への再造林(植林)が進まないということだ。ここでは事由を避けるが、なんと高知県の再造林率は、30~40%である。いいかえると60~70%が〝はげ山(裸地)〟として放置される。このはげ山やはぎ取られた山肌は我々の生活にどんな影響を及ぼすのか。温暖化が進む地球。森林の持つ全機能が消失する中、生態系への影響はないのか、多発するゲリラ豪雨時にこのはげ山になにが起きるのか。そして、そして「森の国こうち」がどのような姿に変わっていくのか。近頃、県内を走っていると写真のような〝はげ山〟や〝削り取られた山肌〟があちこちにみられるようになってきた。どうにもこうにも違和感を覚え、釈然としない。
決して国策に異を唱えているのではない。大きく森林/林業を動かしていく一手であることに間違いはないのだろう。ただ、「森の国こうち」としてこの手法をどう思い、どう想い、どういうオモイを持てばいいのか。未来の山々の姿をどのように描いていけばいいのか。考え始めると脳みそが(★)ちゃがまり、(★)まいまいする。どうすんだ~高知!みんなで考えてもらいたい。
問い合わせ先
NPO法人自伐型林業推進協会
https://zibatsu.jp
土佐言葉 (★)「ちゃがまる」「まいまい」の意味は裏面でご紹介します。