えぬぴぃOh!vol.91(2025年冬号)_web版

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みんなが繋がる、笑顔になれる優しい世界を創る 寄稿:はなまるキッズこうち 代表 廣戸 優尊

 重度の障害を抱える子どもたちやその家族が安心して楽しい、笑顔になれる、可能性を拡げることを目指して、独自の活動を展開している「はなまるキッズこうち」代表の廣戸ひろと優尊まさたかさんに寄稿いただきました。(永野)

きっかけ

 パラスポーツとの出会いや県内外での様々なイベント、交流を通じて、重度の障がいのあるお子さんでもご家族と一緒に楽しめる事が沢山あると知りました。しかし、高知県では運動教室や活動の場所が殆どなく、十分に能力が発揮されていないお子さんや、日常生活で疲弊している親御さんに出会う事が多くありました。もっと色んな事ができるはずなのに・・・という思いから、2017年に活動をスタートしました。最初は、小人数で障がいがあっても行えるハンディキャップヨガの体験会を開催。2018年5月より本格的に活動を開始し、月1~2回(高知市、四万十市)のハンディキャップヨガ教室を中心に、支援者向けの勉強会や外部講師を招いた特別講習会を定期的に実施しました。その後、コロナ禍の影響により、活動を休止していましたが、2023年より徐々に再開しています。

 ともに活動するメンバーは、当事者、特別支援学校教諭、パラスポーツ指導員、リハビリ職、看護師、保育士、介護職、ヨガインストラクター、カメラマン、アーティスト、デザイナーなど多種多様です。

現在の活動

 現在では、体育館での遊具やリハ用具も増え、遊びやフィットネス活動がメインの活動として定着してきました。また、他団体との交流やお声をかけていただくことも増えました。ミュージカルやマリンイベント、クリスマス会の開催、スポーツ大会への参加など、よりアクティブに活動する機会が増えてきています。

高知県障害者スポーツ大会
車椅子も乗れるBIGサップ
(協力:NPO法人YASU海の駅クラブ)
クリスマス会(季節のイベント)
WOWOW主催ノーバリアゲームズ

 「子どもが初めて笑顔で遊んだ」「兄弟も一緒に楽しめた」「親が安心して過ごせる場所があることに感動した」など、参加者の声が活動の原動力となっています。

 今年6月には、高知市春野町にある高知県立障害者スポーツセンターのグランドや体育館において、気球係留飛行、気球ドームの中に入って楽しむイベントを行いました。

 この企画は、高知市まちづくりファンドの助成を受け、高知県社協、高知県、たかねざわバルーンクラブ(栃木)など様々な関係者の支援と協力のもと、四国では初めて開催したもので、目の前で気球が飛ぶ迫力にお子さんはもちろん、ご家族も喜び、興奮されていました。

熱気球係留体験

成果と課題

 これまでの活動の参加者数は、延べ千人以上。最近では、お子さんの能力を引き出すことで、ご家族が感動し、支援者も一緒にやりがいを感じる機会も増えています。さらに、SNSや口コミで活動が広がり、行政や学校関係者、福祉職との連携も生まれつつあります。また、参加した家族同士の交流や孤立の解消、情報交換の場にもなっています。

早期からの電動移動機器の操作練習

 一方で、元々、小児の専門領域は人手が不足しており、現在も療育現場がどんどん閉鎖的になっていく中で、より存在意義が大きくなっていると感じています。しかし、専用施設や人的資源の確保、資金面での持続性など様々な課題があります。特に、重度障がい児の体験に協力してくれる施設、専門スタッフの確保、障がい児支援に理解のある企業・団体との連携が必要です。

フレームランニング(パラスポーツ体験)
ボッチャ(パラスポーツ体験)
スクーターボード
トランポリン

今後の展開

 現在、活動継続や発展のために、法人化や施設整備を計画中です。今後も地域とのつながりを大切にしながら、〝境界のない世界〟をみんなで育んでいきたいと考えています。一緒に活動してくれる仲間や参加してくれるお子さん、また、活動継続のためのご寄付なども募集しております。ご興味がありましたらお気軽にご連絡ください。よろしくお願いいたします。

問い合わせ先

はなまるキッズこうち
高知市中須賀町137番地6
TEL:090-6283-7406
hanamarukochi@gmail.com
https://www.hanamarukochi.com

地域と一緒に育てる多文化共生社会 ~高知(地方)の日本語学校が目指す未来の「まちづくり」~

 多文化共生社会(異なる文化や背景を持つ人々が互いの文化を尊重し合いながら、平和に共存する社会)という言葉をよく耳にします。そのような社会で、地域やNPO、私たちの役割とは何なのか?高知で唯一の日本語学校を持つ、学校法人龍馬学園・佐竹新市理事長、グローバル担当・北古味潤さんにお話をうかがいました。

高知で唯一の日本語学校である、龍馬学園・日本語学科について教えてください。

 日本語学科が出来たのは2018年です。当時から高知県内の労働人口の減少、働き手の不足が問題視されていました。私たちは単なる労働力としての外国人人材ではなく、日本語をマスターし確かな技術を持ち、何よりも高知の風習や文化を理解する、そのような高知経済の支え手としての高度な外国人人材の育成を目的としてスタートしました。

理事長の佐竹さん
グローバル担当 北古味さん

 現在の在校生は約百六十名。龍馬学園全体の学生数が、約千名なので、留学生が約15%在籍していることになります。
 国別では、ネパールが一番多く、その次に、ミャンマー、バングラデシュ、スリランカ、インド等が続きます。最近では、パラグアイなど南米から、過去に移民として海外に渡った日本人の孫世代の入学も増えてきています。

高知の日本語学校として、大切にしている教育、高知だからこそできている教育など、現在学んでいる留学生の様子も含めて教えてください。

 私たちは、東京や大阪ではなく、地方の学校、高知の学校だからこそできる教育を大事にしています。誰でも受け入れているわけではなく、入学試験では日本語力だけでなく高知で学び、高知で働きたい学生を選抜しています。受け入れた留学生は、学校の寄宿舎に入ることで、日々の生活管理をしっかりできるようにしています。地元の町内会や警察との関係作りには力を入れていて、交通マナーに関しては、高知県警察に授業をお願いしています。避難訓練に関しては町内会と連携して行っています。

 入学してすぐに、ゴミの出し方や近所迷惑になる行為、SNSへの投稿にいたるまで、日本社会のルールについて、やさしい日本語だけでなく、留学生それぞれの母国語で教えるようにしています。日本のルール、文化など、生活する上で大切なのは、母国語で理解してもらうことを大事にしています。そこをまだ慣れていない日本語で教えてしまうと曖昧な理解になってしまいます。教える側も、日本と母国の文化・風習、その違いを理解した人が教えるようにしています。また彼らの多くがアルバイトをしています。本校は、アルバイト先と連絡が取れる関係を作り、何か問題があれば報告してもらい、指導できるようにしています。

プリヤンカさん(留学生)
 母国(ネパール)に子供と旦那さんを残して、日本語勉強のために来日しているパワフルママです。日本の文化や風習、社会ルールの理解度も優れていて、ネパールから来る留学生に、母国語で指導する役目も担ってくれています。30歳を超えているので、留学生たちの良きお姉さん、お母さんとしても慕われています。

モハメドさん(留学生)
 お父さんは元高知大学の研究員で、長らく高知で家族と暮らした経験のあるパレスチナ人。

 高知で生まれたモハメドさんが1歳のとき家族でパレスチナに帰国。アラブ首長国連邦(UAE)の大学を卒業した後、日本語研究のため彼だけ高知に戻りました。その後、パレスチナでは紛争が始まってしまい、帰ることができなくなり、避難キャンプで生活する家族を心配しつつ、日本語の学習に取り組んでいます。

 高知だからこそできる教育としては、地域の方達と留学生の距離を近くすることを意識しています。本校は日本人が通う専門学校が母体なので、自然と日本人との触れ合いが生まれているのも特徴ですが、その他にも近隣の小学校、中学校、高等学校、大学と合同授業を行うなど、地域に入っていくことを大事にしています。彼らが地域でマイノリティにならないこと、それが大事だと考えています。そのために私たちは、「地域で人材を育てる」という意識を教育の中に込めています。

近隣の学校とも交流をしています。

 その結果、私たちが留学生と地域をつなぐ役割を果たすことで、地域の方にも、留学生(外国人)と暮らす社会を感じてもらう。それこそが、将来の日本社会、地域社会を日本人とともに支える、人材(留学生)の育成、私たちができる教育ではないかと考えています。

地域の方との交流も大切にしています。

地域のNPOや、まちづくり団体と学校のつながりについて、今後の目標など含めて、どのように考えていますか。

 学校だけで留学生に伝えることができることは限られています。NPO、まちづくり団体、地域活動をされている方達の力をお借りすることで、教育の幅が広がります。学校を起点として、色々な地域の力とつながり、その線をつないで面にしていくことで、高知の多文化共生社会に貢献できるのではないかと考えています。地域との交流、それと日本語学習が大事です。龍馬学園としては、その両方をしっかりと身につけられる教育を、これからも地域の方達の協力を得ながら、一緒に育てていく、そのような環境を整えていきたいと考えております。私たちが育てている留学生は、いずれ、彼らの国と高知をつないでくれる架け橋になる人材です。これからも温かく見守ってください。

生活のためアルバイトも頑張っています。

(北川)

問い合わせ先

龍馬デザイン・ビューティ専門学校 日本語学科
https://www.ryoma.ac.jp/rdb/japanese-course

学校法人龍馬学園グローバル校舎
〒780-0915 高知市小津町3-19
TEL:088−871−0066

こうち森林救援隊“70歳代のオンちゃんたち” のオモイ ~企業や行政、地域との協働の森づくりを目指して20年~

20年越えの長寿森林ボランティア団体

 こうち森林救援隊(田鍋たなべ 俊六しゅんろく 隊長)、平成17年に高知市鏡地区から力強く真摯な活動が始まる。高知の森林・里山の整備を通して〝こうちの元気づくり〟を目的に汗を流す活動歴20年を超えるボランティア団体である。百人以上の会員がいる中で日々活動するメンバーたちは70歳を超えるオンちゃんたちが中心だ。

鏡𠮷原・杉谷山での除間伐

高知の森林を憂うオンちゃんたち

 84%(594,090ha)の森林を持つ我が県は〝森林県高知〟と呼ばれて久しいが、なかでも人がつくりあげた人工林率はなんと65%(386,843ha)に至る。戦後、経済成長に必要な木材を安定供給することを目的に始まった拡大造林事業(平成8年終了)で増え続けたこの人工林(スギ、ヒノキ等)は、人の手で管理しなくてはならないのだが、長らく低迷する国産材の利用や輸入材に依存する構造など、様々な要因により衰退する林業界では、この人工林の管理がまったく追いついていない。

 そして、この放置林となった山々を憂うオンちゃんたちが、平日の多くを費やして木を刈り、草を払い、森林の保全と整備に汗を流している。

とことん人、地域を巻き込む

 とにかく人、地域を巻き込む能力に長けた団体である。設立以降、活動日数は2千3百回を超え、参加者は3万2千人以上に至る。

 本団体と四国銀行、高知県、香南市は4者の協定による「里山づくりの協働の森づくり」を始めるとともに、メインフィールドである春野総合運動公園や野市総合公園、筆山公園、アジロ山、ノツゴ山、鳥坂山などで里山の整備を実施。また、南国市有竹林や各地の放置竹林の整備、果樹園畑整備、高木樹剪定整備(特殊伐採)の他、鏡𠮷原の人工林の除間伐整備も行うなど、多彩にわたる。

四国銀行・新入行員研修会(野市総合公園)

 「東日本大震災」以降は防災を意識した森林の整備や避難路の整備にも尽力。また、大学生や社会人たちを対象にした未来の人材育成を目指した「森づくりを目指す若きリーダー養成事業」も開講している。企業や地域、そして若者を巻き込む力は絶品。絶えず共同と協同と協働を意識しながら高知の森や里山を守り育ててきた。いやはや全く以て頭が下がる思いだ。参りました。

 余談だが、市街地の公園内緑地や人家に隣接する里山整備など市民の目に留まる場所で活動することも大切にしている。これも一つの普及啓発活動だと。

 正しく息つく間もないほどの忙しさである。

(四宮)

 この度、救援隊活動を紹介していただきましてありがとうございます。

 これも一重に仲間たちが熱い想いを抱きつつ一途に活動を継続したことの証しと受け止めさせていただき、これからも頑張らせていただきます。

 皆さんも、是非ご一緒してみませんか~(^O^)

こうち森林救援隊 事務局長 中川睦雄

問い合わせ先

こうち森林救援隊
https://kochiforest.jp

こどもの声を受け止めるチャイルドラインの葛藤 ~18歳までの子どもがかける電話~

 9月13日(土)、高知市文化プラザかるぽーとで「第1回中国四国エリア会議」が開催された。

 チャイルドラインこうちのメンバーをはじめ、中国・四国地区のチャイルドライン各団体やチャイルドライン支援センター(以下「支援センター」)のメンバーがオンライン参加者も含めて集い、支援活動の課題と今後の展望について活発な意見交換が行われた。

対応をめぐる議論

 会議の中心議題は「無言・ワン切り・頻回電話」への対応。これらを子どもからのためらいの表れと捉えるか、いたずらとみなすかで意見が分かれた。受け手の疲弊や対応の限界も指摘され、電話番号の変更などの具体的な対策案も提案された。一方で「どんな電話も一度は受け止めるべき」とする姿勢も根強く、対応の統一には時間が必要とされた。

 また、夏の全国キャンペーンの振り返りでは、参加団体の活動報告とともに、広報の工夫や子どもへのアプローチ方法が共有された。次年度の事業計画では「24時間キャンペーン」の継続を望む声が多く、子どもの意見を反映した活動設計の重要性が強調された。中期ビジョン策定においても、子どもの参画を求める声が上がり、「子どもと一緒に創る」との認識が共有された。

中国・四国チャイルドライン参加体制表

これからのCLに求められるもの

 ネット電話の普及やSNS活用による認知拡大も課題に挙がり、支援センターへの広報強化の要望が出された。さらに、InstagramやTikTokのフォロワーを増やすことも有効な手段とされる一方で、子どもたちにカードを手渡すことで認知を広げる取り組みの重要性を指摘する意見もあった。

 「これからのチャイルドライン」については、子どもたちのニーズに寄り添った活動の在り方が問われた。電話をかけた子どもの満足感や、保護者からの感謝の声など、活動の意義を再確認する場面もあった。初心に立ち返り、子どもたちの声を聴きながら支援の質を高めていく姿勢が強調された。

2025年度 第1回中国四国エリア会議の様子

最後に

 会議は白熱し、時間切れにより一部議題が未討議となったが、今後はメール等で連携を図りながら進めていく方針が確認された。子どもたちの声に耳を傾け、より良い支援体制を築くための一歩となる会議となった。

(森岡)

問い合わせ先

チャイルドラインこうち
https://childline-kochi.org

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