えぬぴぃOh!vol.77(2021年春号)_web版

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食育から山野草(さんやそう)の絵本出版そして子ども食堂へ

【寄稿】山下 智子さとこ

 今回寄稿してくださった山下智子さんは、食育活動から山野草の絵本出版につなげ、その売上から子ども食堂に寄付する社会貢献活動を続けられています。
NPO法人全国子ども食堂支援センターの調査では、子ども食堂は2020年末で五千カ所を超えており、前年度比で千三百カ所以上増えています。山下さんの、一貫した「子どもたちにとって食べることが大切」という信念に基づく活動は、いま最も日本社会に求められているNPO活動のひとつです。(森岡)

食育の道へ

 2015年、私は17年間勤めてきた教育現場を離れ、一人で食育をやっていくことを決めました。現場で子どもたちと接する中で、食育の大切さを感じたからです。仕事をしながら、野菜ソムリエなど食に関する資格をいくつか取っていましたので、それらを活かして食育活動を始めました。
2018年、ご縁が重なり、私は山野草と出合いました。大変身近にあったにもかかわらず、それまで全く気づかなかった自然の宝物に私はすっかり魅了されてしまいました。

山野草を食育に

 高知は全面積の約84%が森林という自然豊かな県で、山野草が豊富にあります。それらを使わない手はありません。私は山野草を自分の食育活動に取り入れていくことにしました。そうすることによって、どんどん山野草の魅力に気づかされていきました。

本を出版しよう

 一人で食育活動を始めてから五年が経とうとしていた頃、私の中に一つの考えが浮かびました。それは、「これまで親しんできた山野草を一つの本にまとめて、たくさんの人に知ってもらおう」というものです。私は絵を描くことも、字を書くことも好きなので、全て手がきの本にしたいと思いました。
それから素晴らしいご縁をたくさんいただいて、約半年後、念願だった本を出版することができました。今も、たくさんの人に届けさせてもらっています。

子ども食堂へ

 私の食育活動の一つに、子ども食堂でのボランティアがあります。子ども、親御さん、地域の方々、みんなが集まって同じ釜の飯を食べます。すると、そこに自然と笑顔が生まれ、幸せな空間ができます。本当にかけがえのない時間でした。
それが今、コロナ禍で活動を制限せざるを得ない状況になってしまいましたが、そんな状況でも何かできることはないだろうかと考えました。考え抜いた末、「こども食堂こうち」に寄付するという考えにたどり着いたのです。

楽しみながら社会貢献

 「楽しみながら社会貢献」これは、私の心の中にずっとあった考えです。社会貢献というと、何か大きなことをしなくてはいけないような印象がありますが、決してそんなことはありません。自分のできる範囲のことで、しかも楽しみながら社会に貢献できるのです。今回のことですと、ボランティア活動に参加できなくても、食材を提供できなくても、本を購入して楽しんで読むだけで子ども食堂に貢献できるというものです。ずっとそのような仕組みをつくりたいと思っていました。それが今回、本の出版という形で叶えることができました。

 このような私の考えに賛同し、本を購入してくださった方もたくさんいらっしゃいます。本当にありがたいことです。これからも自分自身の楽しみや喜びを通して、社会に貢献できる活動をしていきたいと思います。

NPOへのコロナ禍現状アンケートとその後

【寄稿】高知県ボランティア・NPOセンター 専門職員 武田たけだ 真木子まきこ)

2020年6月10日から7月1日にかけ、高知県下のNPO団体へ、コロナ禍での現状についてアンケートを実施しました。110団体からの回答が寄せられ、県下のNPO支援団体で構成されるNPOサポートチーム(※1)で報告書として取りまとめました。
この頃の状況は、第一波がやや収まり、今後どのように活動すべきか模索していた時期のように思われます。マスクなどは入手困難な時期でした。

アンケートの結果

 回答団体の8割以上が、事業実施に影響があると回答しました。過半数の団体が活動場所の確保に影響が出ており、4割以上の団体が、組織内コミュニケーション、感染予防対策物資の入手、スタッフの活動に影響が出ていました。その他、活動の担い手育成やモチベーションなど、継続のために必要な要素にも約3割の団体が影響があったと回答しています。

 経済的な側面では、約5割の団体が自主事業の減収、約2割の団体が助成金の減収、約1割の団体が寄付金の減収があったと回答しました。自由回答欄では、委託事業の中止や自主事業の減収、利用者数の減少などについても具体的な数字が寄せられ、すでに数値化できるほどの影響があったことがうかがえます。また、IT化、他団体との協働や情報収集などに取り組んでいる団体もありましたが、「これからおこなっていきたい」または「おこないたいが、やり方がわからない」という回答も多く見られました。

 もっとも多く要望された支援策は資金支援で、順に情報支援、物資提供支援、人材支援と続きました。詳細については、ピッピネット上にあるアンケート結果のPDFをご覧ください。

アンケートのその後

 2020年11月、その後の状況の確認のため、数団体へヒアリングを行いました。「イベントが実施できず固定費がまかなえない。寄付を募りなんとかやりくりしている」「活動ができず、職員のモチベーションが下がってきている」「工夫しながらギリギリまでスタッフの人件費を下げてしのいでいる」などの回答があり、経営的に苦しい状況は継続していました。しかし、「皆さんも大変なので、なんとかつないでやっていくつもりです」という言葉もありました。

 NPOは、もともと資源や理解の少ない状況から活動を始めた団体も多く、逆境に強い特質は持っています。そのため、現在でも多くの団体が活動を持ちこたえさせています。団体の、活動を続けるそれぞれの意思に感銘を受けると同時に、どうにも立ち行かなくなった時には、自己責任として、静かに活動を仕舞いにされるのではないかと少し寂しい未来も想像します。

 NPO活動のその先には、現代社会では生きづらい方々がいらっしゃいます。また、住民の方の健康や生きがい、環境や経済振興、文化や教育、地域おこしなどの、地域の尊厳や人材を創るための地盤作りがあります。もしその団体の活動がなくなったら、同じような活動が再び立ち上がるには、大きな労力と長い期間がかかるでしょう。そしてなにより、これまで活動をしてきた方々の気持ちを思うと、個々のお顔が浮かび、どうにもやるせない気持ちになってしまいます。

あたたかいエールを

 そこで、この記事を最後まで読んでいただいた方にお願いがあります。地域で活動をしているボランティアの方や団体の方を、少し気にかけていただき、心の中でだけでも応援していただきたいのです。

 もし、直接の応援をされたい時には、お声がけやイベントへの参加などに加え、ボランティアとして登録いただいたり、賛助会員や会員などになっていただいたりと、多様な方法があります。(これがNPOの特徴の一つです。)

 また、NPO高知市民会議さんで実施されている「寄付ぎふと」(※2)や、全国コミュニティ財団協会さんが実施されている「47よんななコロナ基金」(※3)への寄付などの、資金的応援方法も検討していただけます。

 すでに会員やボランティア、スタッフや職員として活動を支えている皆様とは、時代の変化を乗りこなしながら活動を続ける道を、共に探っていければと思っています。助成金、活動のIT化や見直しなどのご相談の他、現状のお声や支援が必要なことなど、お気軽にお寄せください。一緒にウィズコロナを乗り越えましょう!

高知新聞朝刊1面にアンケート結果を元にして記事が掲載された

(※1)NPOサポートチーム
NPO高知市民会議
環境の杜こうち
高知県西部NPO支援ネットワーク
高知県ボランティア・NPOセンター

(※2)寄付ぎふと
市民活動団体の運営資金確保のためのプロジェクト

(※3)47コロナ基金 新型コロナウィルス地元基金
〜応援したい都道府県を選んで寄付できる〜
高知県ページ

問い合わせ先

高知県ボランティア・NPOセンター
業務時間:平日8:30~17:15
TEL:088-850-9100
E-mail:kvnc@pippikochi.or.jp

「天国からの寄付ぎふと」寄付先団体Part3

【寄稿】NPO法人アニマルサポート高知家 代表 吉本由美よしもとゆみ

市民活動団体が活動を継続していくうえで運営資金をいかに確保するかが大きな課題となっており、資金確保の仕組みとして「寄付ぎふと」プロジェクトがあります。今回は、寄付先団体より「アニマルサポート高知家」代表の吉本由美さんに寄稿していただきました。(うらい)

犬も猫も人も幸せに

 アニマルサポート高知家は、「人と動物が幸せに暮らせる社会へ」をテーマに、2019年6月に設立しました。保護犬、保護猫の譲渡会開催を主な活動とし、人、犬、猫の命が共存・共生し、調和する社会になるようサポートしています。現在は、会員29名・ボランティア41名で活動しています。

譲渡会

 高知県の猫の殺処分率は、全国でも常に上位です。行政は人手不足などもあり譲渡会はあまり開催できていません。私たちは、新しい家族と出会う機会を作って命を救おうと、団体独自の譲渡会を実施しています。

多頭飼育崩壊レスキュー

 飼い主が適正に飼育できる数を超え、経済的にも破綻することがあります。その場合、十分な世話がなされておらず不衛生な環境で飼育されています。
 社会福祉協議会などの公的機関や、隣人知人からの依頼もあり、飼い主の相談にも乗りながら生活再建のサポートをしています。

多頭飼育現場

飼育放棄レスキュー

 様々な事情で飼育が困難になった犬や猫の里親さがしもおこなっています。また、飼育者がどうしていいのかわからず困っている場合や一人暮らしの高齢者が施設に入る場合に、犬や猫の行く先がないという場面もあります。

猫の集団不妊手術

 地域猫として生きていく為に集団去勢・避妊手術の手伝い等、地域で見守っていく支援もしています。動物愛護に対する県民の意識を掘り起こし、犬も猫も人も幸せに共生することを目指しています。

TNR活動
T=TRAP(つかまえる)
N=NEUTER(不妊手術する)
R=RETURN(元の場所に戻す)

これから目指したいこと

『高齢者が犬や猫とくらせる仕組みづくり』

 2020年の高知県の高齢化率は35%まで上がり続け、三人に一人が65歳以上という状況になりました。また百歳以上の人口比率も全国3位となっており、超高齢化社会の先頭グループにいます。

 高齢者でもペットと暮らしたい方はたくさんいらっしゃいます。ただ現実には年齢を理由に新しく家族に迎えいれることを諦めてしまう方もおられます。

 しかし高齢者にとって犬や猫との暮らしは良いことがたくさんあります。心が安定し孤独感の解消につながり、認知症防止や血圧の安定、お散歩で外出の機会が増え、足腰が丈夫になり仲間も増えるのです。さらに犬や猫にとっても飼い主に一緒にいてもらえる時間が長く、たっぷり甘えられます。ペットと高齢者はお互いにメリットが大きいのではないでしょうか。

寄付金の使いみち

 『天国からの寄付ぎふと』の寄付金は保護犬、保護猫を里親さんに繋ぐまでの医療費、検査代、フード、猫砂やトイレシートなどの購入に使わせていただきます。自己資金のない当会にとって本当にありがたい限りです。

 大切な人を見送られた方からのお気持ちに感謝し、会員一同心から御礼申し上げます。

☆預かりボランティア募集(60歳以上) 興味のある方はお伺いして説明させて頂きますのでご連絡ください。

預かりボランティアとは、保護犬や保護猫を里親さんに繋ぐまでご自宅で一時的に家族として預かるボランティアです。

NPO法人アニマルサポート高知家 090-1323-9874(掛水)

https://anisupo.jimdofree.com/

「ファンドレイジング」ってなに?寄付集めだけにとどまらない「ファン(応援者)」集めの活動

新型コロナウイルスの影響を受けて、経営が苦しくなったNPOなど、世の中いろいろと困っている人がいます。そんな中、メディアを通して「ファンドレイジング」という言葉を見聞きする機会が増えました。

ファンドレイジングってなに?

 「ファンドレイジング」とは、NPO、学校、病院などの非営利組織が活動するためのお金を集めることを指します。活動に必要なお金(活動資金)を集めることを指すので、お金を集める行為なら、寄付を集める事だけではなく、国や県などの補助金を獲得すること、自分達が提供するサービスの対価としてお金をいただくことも、広く「ファンドレイジング」ということになります。

 その中でも今回は、「寄付集め」についてお話をしたいと思います。

ファンドレイジングにおける「寄付集め」

 「ファンドレイジング」とは、その言葉から「ファン=応援者」を集める行為とも言われています。ただ寄付を集めるだけではなく、自分達の活動や、その活動が目指す未来をちゃんと伝えて共感してもらう。その結果、「応援者=ファン」が増えて、応援の形としての「寄付=お金」が集まるということが、「ファンドレイジング」における「寄付集め」の理想だと言えます。

「ファンドレイジング」についてもっと知りたくなったら

 もっと「ファンドレイジング」について知りたいと思う方がいましたら、認定NPO法人日本ファンドレイジング協会のホームページをのぞいてみてください。

 「ファンドレイジング・日本」というアジア最大のファンドレイジングイベントを主宰していて、私も2019年に参加しましたが、全国から数千人のファンドレイジングに携わる人、興味のある人が集まり、二日間、あらゆるテーマのセミナーに参加しながら見識を深めるとともに、NPOをはじめとした福祉、教育といった分野別、また四国をはじめとした地域別の交流会があり、新たな仲間やチャンスを作るきっかけになりました。

アジア最大のファンドレイジングイベント「ファンドレイジング日本(2019年)」の様子

NPO高知市民会議のファンドレイジング

 NPO高知市民会議でも、社会に貢献する団体や活動の支援を目的とした「ファンドレイジング(寄付集め)」を行っていて、代表的なものとしては、「寄付ぎふと」プロジェクトというものがあります。

◎お香典を社会に生かす天国からの「寄付ぎふと」
◎飲みもって、食べもって「寄付ぎふと」

 飲みもって、食べもって「寄付ぎふと」は、飲食店に寄付つき飲食メニューを提供していただき、飲んだり、食べたりしながら寄付できる仕組みです。

 コロナ禍の今年は、地域の特産品を購入すると「寄付」につながるという活動、お取り寄せで「寄付ぎふと」を始めました。

 まるごと高知Online Shopでクーポンを使い購入すると、購入者は代金の5%割引、さらに購入代金の5%が高知県で活動している社会貢献に取り組む6団体(NPO法人アニマルサポート高知家を含む)に寄付されます。クーポンご利用可能期限は4月30日まで。

 その他、ファンドレイジングについてのイベントの開催も定期的に行っています。

ファンドレイジングの事例から、寄付や資金調達の手法、ファンドレイザーの役割について学び、考える講座

(北川 力)

●ファンドレイジングについて(日本ファンドレイジング協会HP) https://jfra.jp/
●お取り寄せで「寄付ぎふと」について(高知市市民活動サポートセンターHP) http://www.kochi-saposen.net/

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